今日からできるお口のトレーニング!~オーラルフレイルを跳ね返す日常生活の知恵~
前回の記事では、お口の些細な衰えが全身の健康や寿命に大きく影響する「オーラルフレイル」についてお話ししました。
「自分にも少し心当たりがあるかも…」と不安になられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。上田貴之先生(東京歯科大学教授)や平野浩彦先生(東京都健康長寿医療センター)らの研究でも強調されている通り、オーラルフレイルは早期に適切なケアを始めれば、元の元気な状態にしっかりと「リセット(可逆)」できるのが最大の特長です。
今回は、ご自宅で今日からすぐに始められる具体的なトレーニングと、お口の機能を維持・向上させるための日常生活のコツをお伝えします。
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毎日3分!お口の筋肉を鍛える「健口(けんこう)トレーニング」
お口の周りや舌の筋肉は、使わないでいるとあっという間に衰えてしまいます。日々のルーティンに取り入れたい、代表的な3つのトレーニングをご紹介します。
① 滑舌と飲み込み力を高める「パタカラ体操」
「パ・タ・カ・ラ」と、一文字ずつお口を大きく明確に動かしながら発音します。
- 「パ」: 唇をしっかり閉じて発音(食べこぼしを防ぐ唇の力を鍛える)
- 「タ」: 舌先を上あごの前歯の裏に強く押し付けて発音(食べ物を押し潰す力を鍛える)
- 「カ」: 舌の奥を上あごの奥に引き上げて発音(誤嚥を防ぎ、喉へ送り込む力を鍛える)
- 「ラ」: 舌を丸めて上あごにしっかりつけて発音(食べ物をまとめる力を鍛える)
※食事の前に各音を「パパパパパ…」と10回ずつ唱えるだけでも、お口や喉の準備運動になり、むせの予防に効果的です。
② 舌の筋力を取り戻す「舌ストレッチ」
舌は大部分が筋肉でできています。舌の力が弱まると、喉へ食べ物をスムーズに送れなくなります。
- 舌を思い切り前に突き出し、5秒間キープする。
- 舌を上唇、下唇、左右の口角に向かって順番に伸ばす。
- 口を閉じたまま、舌先で歯ぐきの外側(唇の裏側)をグルリと1周なぞる(左右各5回)。
③ 唾液の分泌を促す「唾液腺マッサージ」
加齢や薬の副作用で口が渇きやすい方は、お食事前に唾液腺をやさしく刺激しましょう。
- 耳下腺(じかせん): 上の奥歯あたりの頬に指を当て、後ろから前へ円を描くようにマッサージする。
- 顎下腺(がかせん): あごの骨の内側の柔らかい部分を、親指で数箇所順番に押す。
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食生活で意識したい「噛み応え」と「会話」の機会
トレーニングだけでなく、日常のちょっとした意識変革も重要です。
- 「一口30回」を目指してしっかり噛む: 柔らかいものばかり選ばず、少し歯ごたえのある食材(根菜やきのこ、肉類など)を献立に取り入れましょう。噛む回数が増えることで、脳への血流もアップします。
- 誰かと会話をしながら食事を楽しむ: 楽しくおしゃべりすることは、それ自体が最高のお口の体操です。一人で静かに食べるよりも、お口や表情筋が大きく活発に動きます。
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歯科医院と二人三脚で守る「お口の健康環境」
ご自宅でのセルフケアやトレーニングに加え、定期的なプロの目によるチェックとケアが欠かせません。
当院では、虫歯や歯周病の治療・予防はもちろんのこと、普段の診察の中で「しっかり噛めているか」「お口の中に動きにくさや乾燥がないか」を細かく観察しています。
合わなくなった入れ歯を無理に使っていたり、歯が抜けたまま放置していたりすると、どんなにトレーニングをしてもお口の機能は回復しません。しっかり噛める噛み合わせを整え、定期的なプロによるクリーニング(バイオフィルム除去)でお口の衛生状態を保つことが、オーラルフレイル予防の土台となります。
まとめ:諦めずに「いつまでも美味しく食べる」ために
「歳だから食事でむせるのは当たり前」「滑舌が悪くなるのも仕方ない」と諦める必要はありません。今日から始める小さなトレーニングと丁寧なケアが、5年後・10年後のあなたの笑顔と健康を支えます。
お口の動かしにくさや気になる変化がありましたら、どんな些細なことでもお気軽に当院にご相談ください。私たちが患者さん一人ひとりの「食べる喜び」をずっと応援してまいります。
参考文献(文字数外)
- 平野浩彦 (2020) 「オーラルフレイルの概念と地域における展開」 日本老年医学会雑誌, 57(1), 17-23.
- 上田貴之 (2021) 「高齢者における口腔機能低下症の診断と管理」 日本歯科理工学会誌, 40(2), 95-98.
- 公益社団法人 日本歯科医師会 「オーラルフレイル予防・対策の取り組み」
- 公益社団法人 東京都歯科医師会 「健口体操・パタカラ体操ガイド」
