様々な分野で役立っている法歯学
みなさんは「法歯学」という分野があることをご存じでしょうか?
歯の特徴を使って人物の身元を判別したり、その人の生活状況などを分析したりする研究分野です。
それまで、あまり知られることのなかった法歯学と言う研究分野が、大きく注目されるようになったきっかけは、520人もの方々が死亡した、1985年の日本航空ジャンボ機墜落事故でした。
この痛ましい事故では、亡くなられた方々の遺体の損傷が激しく、身元の特定は難航しました。
そこで群馬県警に委託された法歯学者や、全国から集まった歯科医師が、歯型や治療の痕の照合を行い、犠牲者の40%以上の身元確認にこぎつけたそうです。
法歯学の分野では、歯科医院に保管された患者さんのカルテやレントゲンが、ご本人であることを確認するための、非常に重要な手がかりとなります。
また、2011年の東日本大震災の時にも、全国から歯科医師が集まり、津波で亡くなられた多くの方々の身元の特定に尽力しました。
このように、法歯学は事故や事件の際の身元判別で活用されています。
これらの事故による身元の特定だけではなく、法歯学は様々な分野で役立っています。
最近注目されているのは、児童虐待などを早期に発見する取り組みです。
先日の産経新聞に、「児童虐待を早期発見」という記事が掲載されていました。
学校での歯科健診や、歯科医院での治療の際のお口の中の状態から、幼児虐待の早期発見を可能にしようという、新しい試みです。
歯科医と連携し早期発見
このような流れを受けて、歯科医と連携して幼児虐待を早期発見しようという取り組みの中で法歯学が注目されています。
東京都歯科医師会が、虐待を受けた12歳以下の子どもの歯を調べたところ、虐待された児童は、一般の児童より虫歯の本数が多く、治療の傾向がみられないそうです。
虫歯ではないのに歯の色が変色している場合は、過去に強い衝撃を受けた可能性があるそうです。
幼児虐待を受けていれば、虫歯になっても歯医者さんに連れて行ってもらえない、ちゃんと歯磨きの習慣ができていないなど、可能性としての幼児虐待のサインのひとつと考えられるかもしれません。
まだ、一般にはあまり認知されていない分野ですが、法歯学は様々な分野で非常に大切な役割を果たしているのです。